「心を持つ白磁」~白潟八洲彦の作品~
制作者とのファーストタッチは私にとってはとても楽しい一瞬です。
なぜなら、それは30年以上、焼き物や工芸品の世界に生きた私にとって作品と制作者との相関性を体感できるもっとも自然で楽しい瞬間だからです。
感情移入の難しい素材の一つである白磁に心を与えることのできる陶芸家。
私は心の中で自分の眼がはっきりと先生の感性を捉える事ができていた事に喜びを感じ、これからふれる白潟八洲彦の世界に心を躍らせたことを、今でもはっきりと覚えています。
もうひとつのお話、それは私と「福猫」ちゃんとの出会いです。彼は他の作品と少し違った趣を持った作品だと直感できます。よく話を聞くと「福猫」の造形やデザインは奥様が担当し、先生が仕上げを担当していたのです。
「福猫」ちゃんが、なんとも微笑ましい雰囲気を持ち合わせていた理由は奥様とお会いした瞬間に理解できます。
優しく全てを包み込む大らかなお人柄。
白潟氏の作品は先生の持つ真っ直ぐで純真な心、長年培われた轆轤や焼成技術そして何よりもそれを見事に支える家族の深い思いであると知りました。
昔から陶芸の世界は家内工業。一家総出で協力し、家族も持つ人も幸せになれるようにと、心をこめて一つ一つを作り上げます。
焼き物を作るのに大事なものは沢山あります。
その一つが、持つ人に喜んで欲しいと思う熱い心です。
その心をご夫婦で見事に陶磁器に焼き込める、が八瑞窯の真髄です。
その想いが炎、素地、釉薬と相まって見る人、使う人の心を和ませ満たすのだと私は信じています。
京都美商(株)代表 井村欣裕
1961年創業以来、海外から先駆的に古伊万里、柿右衛門様式の作品を里帰りさせ、国内において紹介、販売した先代を引き継ぎ、まだ知られていなかったジャポニズム(日本趣味)のバカラを見出した。
現在ではオールドバカラ 700点と柿右衛門・今右衛門のコレクション 800点を所蔵、研究。
バカラのほかにも ガレ、ドーム、マイセンといった西洋アンティークと、江戸時代から現代に至る柿右衛門、今右衛門はじめ肥前磁器を主に取り扱う。
作り手が誰かに喜びを与えたいという純粋な想いから創られた職人技、手作りの温かみのある美術工芸品の収集、研究をしている。
近代有田美術陶芸の復興に尽力した十代今右衛門、十一代柿右衛門以降の美術陶芸作品を中心に800点を超える自社コレクションの有田焼古陶磁の一部を井村美術館にて展示。社会全体の美術に対する視点がより深まることを願い、活動中。
柿右衛門、今右衛門、アールヌーヴォーのガラス、オールドバカラに関する本も執筆、出版。