職人さんの手によるギャラリー作り
我が家には築100年くらいの長屋門があります。
私の夫が子供時代は、子供部屋として使われました。そのあとは納屋として、普段使わない家具、着物や農機具が収納されていました。
土壁は、老朽化が原因で、土がボロボロと落ちてくる状態でした。今回思い切って、ギャラリーに改装することにしました。 展示会を開催したり、作家さんが宿泊できるような多目的使用の場所作りです。
設計をお任せした建築家と話し合い、外観は、昔の姿をできるだけ復元します。
昔の建物を現代に蘇らせる建築は、ギャラリー凜が扱う伝統工芸品の展示場に相応しいかもしれません。
古い木造建物のリフォームは、解体も、取る柱と残す柱、壁、間違えないように注意
が必要です。
また、 無から作り上げる新築と違って、木も反ったり歪んでいるから、収まりが難しいこともあります。 腕のある大工さんの技術が必要不可欠です。
作業台の上でカンナをかけた板を設置現場にはめてみて、再度その場で板にカンナをかけて、綺麗に収まるまで微調整。収まったら固定。
一枚、一枚、一本、一本の板や角材が、こうして家のパーツとなって、それぞれの役割を果たすように収められ、一軒の建物が出来上がります。実に根気のいるコツコツした作業で、大工さんの仕事を見ていると頭が下がります。
一方で、大工さんは少しずつ形が出来上がっていく「ものづくり」の醍醐味を味わっていらっしゃるのでしょう。
時には、大工さんからお声がかかることも。
「奥さん! この台の位置、これくらいでいい?」
私「えーっとぉ、、、どうかなあ? そうしようか?」
敷地内のリフォーム工事を始めて早一年。私と大工さんも気心がバッチリ知れてきました。 一緒にチームとなって作り上げている気がして楽しいです。
大工さんの仕事が終わると左官屋さんの壁作りが始まります。
左官さんが外壁の「漆喰塗り」と「洗い出し」を作ってくださいます。
「漆喰塗り」とは消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした材料で壁を塗ることです。古いお蔵などで見る白い壁です。消石灰は、二酸化炭素を吸収し、年月をかけて徐々に石灰石(元々はサンゴ礁)へと戻り固まっていきます。こうした現象から、漆喰壁は呼吸すると言われます。
「洗い出し」という手法は、壁にセメントと一緒に細かい石を塗りつけ、セメントが完全に固まる前にハケで壁に塗られたセメントを洗い流し、最後に水のスプレーで、更に綺麗に洗い流して石を露出させる仕上げ方法です。外壁や玄関の土間などでよく見られます。
どちらも昔からの伝統的な左官屋さんの技法です。
地道な、人の手仕事ですが、壁が美しく出来上がっていきます。
こうした作業工程は今しか見ることができないと思うと、私は、自分の仕事を放っておいてでも、つい見入ってしまいます。
私の母方の祖父は左官業を営んでいたから、私はよけい郷愁を抱き、親しみを感じるのかもしれません。
職人の知恵を働かせ、丁寧に作ってくださる作業を見ていると、愛おしくて、大事に使いたいと思います。どんなものでも人の手が作り出す。当たり前のことを改めて実感します。
昭和以前、今ほど豊かではない社会では、父母の手で作られたものや、職人の仕事が日常の暮らしにありました。
高度経済成長を経て、バブル時代が到来し、機械化された工場で効率よく大量生産された扱い易い化成品が社会に安価に出回るようになりました。便利なものではありますが、均一で無機質な感じは否めません。「人間はいずれ土に還るから、人間には土が馴染む」とかつて左官の親方から言われたことがあります。その言葉を聞いたとき私はとても納得しました。人間は自然界の動物です。自然素材のものの方が人に優しく、化成品より相性が良いでしょう。
大工さんはじめ、様々な分野の職人さんたちは高齢化で、次世代の担い手がいないのが業界の悩みだそうです。日本は技術立国と言われて久しいです。トヨタにしても、ソニーにしても、大企業の技術は元々職人の技術から生まれました。職人さんの手仕事を大切に守っていきたいと思います。
夕方暗くなって、大工さんが帰られる時は、最敬礼したくなります。手を振って見送ります。
建具、設備設置工事が終わるとギャラリー箱物完成もいよいよ見えてきたかな。
さあ、家具職人さんと陳列棚の打ち合わせを開始。
ギャラリーがグランドオープンする春の到来が楽しみです。
陶磁器を中心に日本の伝統工芸を扱う|山田 聡子のギャラリー凜
~美しいものを暮らしの中へ~
北名古屋を拠点に、伝統的な作家の逸品を取り扱う【ギャラリー凜】の公式サイトです。
砥部焼をはじめ、陶芸、染織、木彫、、、各地の作家が生み出す伝統工芸と
その想いをお届けいたします。真珠アート等、伝統を元に生まれた現代的な作品も
扱っています。
AIの時代だからこそ感性を大切に。
繊細な手仕事による伝統工芸を次世代に。
日本の生活様式に改めて価値を認め、「匠の技」、「用の美」を日本だけでなく世界に向けて広くご紹介し、
文化交流に繋げています。
お客様のご要望を作家へ取次ぎ、作家と二人三脚で制作するオーダーメイドも承ります。
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