美濃焼の里を訪ねて(3)黄瀬戸
黄瀬戸は鎌倉時代の古瀬戸の流れを汲み、瀬戸、美濃で焼かれる朽葉色の陶器です。木灰と素材の土に含まれる僅かな鉄分を酸化焼成して生み出す味わい深い黄色がその特徴です。
三つの種類があります。
ぐいのみ手・・釉に光沢がありビードロ肌。
アヤメ手 ・・艶がなく表面がざらっとしているあぶらげ肌。「油揚手(あぶらあげで)」とも言われるそうです。
菊皿手 ・・光沢が強く、微細な貫入があり黄色が濃いもので、菊花紋の皿やぐい呑に多い。
土岐市の子の日窯、大嶋久興さんは黄瀬戸に取り組んで40年以上。かつて黄瀬戸の名品を生み出した元屋敷窯があった場所で作陶を続けていらっしゃります。 化学的な調合を好まず、多種の灰を試みて、黄瀬戸釉を作られているそうです。 ピカピカでもガリガリでもなくいい塩梅で釉薬が溶ける頃合いを模索して、窯の火を止めるそうです。大嶋さんが好む炭を扱っていた炭屋さんが人手に渡ってからは、好みの炭の入手が難しくなり、灰の調合に工夫を重ねていらっしゃるそうです。穏やかなお人柄が表情に表れていらっしゃりますが、「難しいんです」と仰いました。
大嶋さんの作品は上品でなんとも言えない温かさを感じます。
「福」という字が真ん中に掘られているお皿を分けていただきました。
朝日陶芸展、東海伝統工芸展に入選され、平成22年には岐阜県伝統文化継承功績受賞された大嶋さんは、財団法人徳川黎明会(尾張徳川家伝来の美術品・文献資料等の収集・保管、一般公開を行い、美術や史学の研究に資することを目的とし、徳川美術館、徳川林政史研究所を運営している団体)の記念品制作も手がけられました。
無理をなさらず、いつまでもお元気で、納得いく作品作りに挑んでいただきたいと思います。