養其拙

「養其拙」

新しい家の洗面所に、場所を得て、好きな書を飾りました。

母の亡き兄(私の伯父)の字です。

詳細な経緯は忘れましたが、私が小学校高学年か中学に上がる頃に、伯父の家に遊びに行っていた私に伯父が半紙に書いてくれたものを、当時、私が母に頼んで特別に額装してもらった覚えです。

私の母の祖父は地主で、地代で暮らし、文人趣味の暮らしだったそうですが、
母の父は左官業を興し、大勢職人さんを抱えていました。
そんな家に長男として生まれた伯父ですが、体が小柄で弱く、兵隊検査にかろうじて合格し出兵。 満州から引き揚げた時は腰まで河の水に浸かり馬の尻尾を持って流されないように歩く昼夜強行で、並々ならぬ苦労があったと、母や他の叔父から伝え話を聞きました。 

戦時下の1940年代に、眠気を覚まし、疲労を吹き飛ばすと国を挙げて覚醒剤を製薬会社が大量生産し、軍人に特に出回っていたヒロポン。
伯父もヒロポン中毒だったのではないかと聞きます。

生還した伯父は、終戦後は酒呑みで、毎晩のように職人さん達を引き連れてお酒を飲み歩き、家業を廃業に追い込みました。

そんな伯父が晩年、書を書いていました。

この書は、伯父が私に書いてくれたものだから、落款も無いけど、私は大好きで、10代の頃は部屋に飾り、結婚してからは、ずっと保管していました。

日展にも一度出展したことがあったようで、雅号は「臥龍」(がりょう)
臥龍とは、臥せる(伏せる)龍、まだ出世の機会を持たず、じっとひそんでいることを意味するそうです。

伯父は自らの体験から、この言葉を私に書いてくれたのではないかと思います。

私は「自分の拙さを養いなさい」だと読んできました。

養其拙 = 其の拙を養ふ(その素朴さを養う)
 = 飾り気のなさ(気持ち)を養う

つまり、飾り気なく素朴に暮らしなさい
という意味なんだそうです。
友人が教えてくださりました。

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